研究・学会発表
「男性型脱毛症とエピジェネティックス:男性型脱毛症の一卵性双子11組の診療経験より」が
European Journal Medicineに掲載されました
概要
同一の遺伝子を有する一卵性双子。男性型脱毛症(AGA)の一卵性双子11組において兄弟間の毛量を比較することで、AGAの発症、進行における環境因子の影響の有無を検証しました。一卵性双子11組中5組で、兄弟間に明らかな毛量の差と発症時期の違いを認めました。Nyholtらは大規模な双子研究によってAGAの発症、進行は遺伝要因の関与が大きい事を報告していますが、今回の研究により同一の遺伝子を有する一卵性双子であっても、必ずしも同じ脱毛経過をたどるわけではないこと、すなわち、AGAの発症と進行に環境因子の影響が無視できない事が確認されました。
目的
男性型脱毛症の一卵性双子11組の毛量を観察し、AGAの発症、進行と環境因子の関わりを検証する。
方法
男性型脱毛症の治療を希望してクリニックを受診した一卵性双子のうち、過去に発毛の治療を受けた経験のない11組(年齢20歳~43歳、Norwood/Hamilton分類:Ⅱv~V)を対象とした。診察時に撮影した頭部写真を用いて、10人の医師が双子間の毛量の違いについて、著明な差あり、中等度の差あり、軽度の差あり、明らかな差なし、の4段階で評価した。11組の一卵性双子の内、クリニックでミノキシジルとフィナステリドによる発毛治療を開始した9組については、治療開始1年後においても頭部撮影写真を用いて同様の評価を行った。初診時にはAGAの発症時期(本人が薄毛を自覚した時期)、喫煙歴、飲酒歴、既往症について問診を行った。
結果
- ・11組中5組の一卵性双子で兄弟間に毛量の違い、及び発症時期の違いを認めた。毛量が少ない双子で、より早くに脱毛症を発症していた。
- ・上記の5組の一卵性双子では1年間の投薬治療後も兄弟間で毛量の違いを認めた。
- ・兄弟間での毛量の違い、発症時期の違いと、飲酒歴、喫煙歴、既往症の関連性は確認でき
結論
11組の一卵性双子のうち5組において、兄弟間で毛量、及び脱毛症発症時期に違いがあることを確認した。男性型脱毛症の発症と進行に環境因子が関与している事を示した。
- ・兄弟間での毛量の違い、発症時期の違いと、飲酒歴、喫煙歴、既往症の関連性は確認できなかった。
追記
本研究は2011年7月6~9日、イスラエル・エルサレムで開催された第15回ヨーロッパ毛髪研究学会(15th European hair research society)において「Best clinical lecture」を受賞しました。
Koyama T, Kobayashi K, Wakisaka N, Hirayama N, Konishi S, Hama T, Takeda K, Nakamizo Y, Kawakami M. Eur J Dermatol. 2013 Jan-Feb;23(1):113-5
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